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促されるままにそこに腰掛けると、向かいのデスクに少年が続いて座った。
…ちょっと待て。
まさか、だよな?
「もしかして…あんたが生徒会長なのか?」
「もしかして、君が生徒会長さんなの?」
郁と声が重なった。どうやら考えていたことは一緒だったらしい。
少年は大きくつぶらな目をぱちくりと二回ほど瞬きさせると、大袈裟に驚く仕草をした。
「えぇーっ!?まさかそうとは知らずに俺に声をかけたのかい君達は!」
いや、声をかけてきたのはあんただろう。
そう突っ込みたい気持ちを抑え、アメリカのコメディー番組張りのリアクションを取った少年、改め生徒会長をまじまじと見つめる。
…どこからどう見ても中学生くらいにしか見えない。中学生でなかったにしろ、俺より年上には到底見えない。まぁ、郁みたいな奴も居ると考えると不思議ではないのかも知れないが。
「すみません会長、僕達新入生で、まだこの学校の事とか全然わかってなくて。会長の事も全く存じ上げてませんでした」
普段の郁からは考えられない程の嫌に低姿勢な物の言い方に、思わず吹き出しそうになる。しかし、新入生、という言葉を聞いて、会長は「あぁ、成る程ー」とパチンと指を鳴らした。
一々漫画のようなアクションをする奴だな。
「それで、新入生の君達が生徒会室、もとい俺に何の用だい?依頼じゃないとすると…あ、もしかして生徒会に興味があるとか?見学は放課後しか受け付けていないんだけどなぁ」
「あの、失礼ですが」
一人で話を進める会長に、郁が手を挙げて口を開いた。
「ん?何だい、キュートなボーイ」
「色々聞きたい事とか突っ込みたい事は山ほどあるんですけど、一つ聞いても良いですか?」
会長のボケ(たのかはわからないが)を無視し、淡々とした口調で言う。
「うんうん、一つと言わずいくつでも質問してくれて構わないぜ。何ならスリーサイズも教えてあげよう」
誰得だよそれ。
「会長は先程、『授業中にこんな所で何をしているのか』、と僕達に言いましたよね?それはこちらからも言える事なんじゃないかなと」
「あぁ、確かにな。そこんとこどーなんすか」
俺とした事が、そんな事気にも留めていなかった。というか、授業に出ないのが当たり前みたいな振る舞いの彼の所為で、違和感さえ感じられなかった。
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