プレゼント

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「じゃあ、先に生まれたアンタの分から買おうか」 ソイツがカードを渡すと、店員が困惑顔で何度もカードを機械に通す。 流暢なフランス語で会話をする、ソイツと店員。 俺の方を振り向いたソイツは店員よりも困った顔をしていて、言い難くそうに口許をモゴモゴ動かした後で口を開く。 「カード読み取れないみたいなんだ……」 ごめん、と今にも消え入りそうな声で呟き俯く。 「これで二つ共買おう」 ソイツの掌に俺のカードを握らせる。 益々申し訳なさそうな顔したソイツに早くしろと背中を押し、俺のカードで俺とソイツの誕生日プレゼントを買った。 店を出ると、今度はソイツの方から遠慮がちに握られる手。 「悪かったな……」 そんな辛そうな顔をしないでくれよ。 俺の前では、いつも強気な笑顔でいろよ。 「これはお前の誕生日プレゼントだからな。今度、お前の誕生日の時に俺の誕生日プレゼントにお揃いの物を何か買ってくれ」 「何だよそれ。変なの」 やっと笑ってくれたソイツ。 早速、ソイツへの誕生日プレゼントを、お互いの腕に付け合う。 「自分の誕生日に恋人の誕生日プレゼントをお揃いで買うなんて、ロマンチックじゃないか?」 「そうか?」 「お前はロマンの欠片も無いからな」 「ロマンよりマロンの方がいいからな」 「天津甘栗ばかり食べていたもんな」 寮のリビングのローテーブルの上の栗の皮の山と、満足げに腹を摩るソイツを思い出し声をあげて笑う。 俺に釣られてソイツも笑い、二人の楽しげな声が澄んだ空に吸い込まれていく。 「俺の誕生日までに、何が欲しいかちゃんと決めとけよ」 「あぁ。お前のプレゼントの倍の値段のヤツにするよ」 「酷っ。アンタのが金持ってるくせに」 一旦仕事に戻り、夜にホテルで落ち合うと一夜の逢瀬を楽しんだ。 翌朝、眠たそうに目を擦るソイツが腰を庇いながら部屋を出ていく。 「じゃあな」 「あぁ、またな」 挙げた手には、お揃いのプレゼント。 《終》
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