18章 孤独な狼と聖夜の日

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帰り道、白い吐息を吐きながら冬馬は駅の改札口を出た。 口の中には、甘いものの後に飲んだ紅茶の余韻が残っている。そのおかげか、外に出ても寒さを感じない。 むしろ、全身は温かかった。 暗闇のなか、街灯だけが道を示す真冬の住宅街を行く冬馬は神奈川に来る前の事を思い出す。 そういえば、練習後にアイツがいつも買ってきてくれたよな。冬馬はふと、海嶺高校に進学した親友の井ノ瀬達也を思い出した。 中学のとき、練習後に着替えてすぐ井ノ瀬は学校の隣にあるコンビニからティラミスを買ってきては、毎年冬馬にあげていた。 「ほら、誕生日おめでとう。」 拒絶する冬馬に対し、無理やり手渡した井ノ瀬。 今思えば、中学生の資金力ではやや高めのケーキを、わざわざ俺のために買ってきていたのだ。 それなのに、俺はぞんざいに扱っていたなんて。 冬馬はポケットに手を突っ込んで、携帯電話を取り出す。アドレス帳をたどって、ある番号に電話をかける。 今までの感謝の気持ちを伝えたいのと、友人として声が聞きたいと思ったからだ。 「元気か、達也。お前に俺からかけるなんて何年ぶり……さみしくねえよ、バカ。」 耳に当てたスピーカーから聞こえる井ノ瀬の元気そうな声に、冬馬は自然と笑みがこぼれる。 「今日から俺も16歳だぜ、ああ……ありがとう。ところでお前、サッカーは順調か。」 寒い日は、いつも早歩きで逃げるように暖かい家に逃げ込んでいた。だが、今日はもう少しゆっくり歩いてもいいだろう。 木戸川監督が言っていた、「足りないもの」を冬馬は手に入れられたような気がした。
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