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ある程度人数が集まってきたのか、10組が騒がしくなる。
利央は愛用の腕時計をみる、入学式までもうすぐだ。
「入学式、一緒に行こうか」
「あ、まって。冬馬もいこう」
仁はそういうと、奥の席で突っ伏している男子のもとに駆け寄った。
二人もついて行く。
寝ている彼をしきりにゆする仁。彼は片手で、仁の手を乱暴に払うと顔を上げた。
カミソリのように切れ長で常につり上がっているかのような細い眉と鋭い目が特徴で、怖そうな顔をしていると、利央は少し腰が引けた。
「相沢、なに人が寝ているときに無理やり起こすんだよ」
睡眠妨害されたのが気に食わないらしく、少し怒気を含んだ声で仁を睨みつける。その顔は威嚇する狼のようで、相手を圧倒させる目つきだ。
無愛想でトゲのある口調……関わることさえ、危険な雰囲気を出している。
「入学式始まっちゃうからね。冬馬に知らせないと、って思ったから」
そんな雰囲気を意にも介さないのか、仁は穏やかな口調で彼にいった。
仁の言葉を聞いた彼はすくっと立ち上がり、顔面にたれた前髪をかきわけて利央たちに目を向ける。
まるで蛇に睨まれたカエルのように利央は背中が凍った。
「相沢、誰だよ」
「同じサッカー部に入る利央とスタン、どっちもMF」
「藤崎冬馬(ふじさき とうま)、FW(フォワード)だ」
髪型を整えると、冬馬は無愛想に言い放つ。あまりにもそっけない態度にあっけにとられる利央。
自分たちに興味はないのか、冬馬は教室を出て髪をさわりながら体育館へ一人で向かっていった。
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