1317人が本棚に入れています
本棚に追加
仁に冬馬のことを尋ねると、どうやらサッカーの国といわれている静岡出身で、全国中学総体にも出場したことがあるらしい。
静岡の過去何年かの記録でトップクラスに入るほどゴール数を誇り、チームの得点王で名のある強豪からスカウトされたらしいが……。
「いろいろあってウチにきたみたい」
演説が長い入学式が終わり、教室へ戻る途中に仁は小さい声で利央たちにいった。
性格がキツい冬馬も、あの語り口の熱い木戸川って人に惹かれて入学したのだろうか。
自分や仁、スタンのように。
「つか、どうやって冬馬から話きけたの」
「中学総体で一緒に対戦したから。まあ、俺が負けちゃったけど」
「そうなんだ。ところで、仁はどこからきたの?」
利央は仁の出身地を尋ねていないことに気付いた。
「俺?俺は北海道の小樽から」
「北海道!遠いね……」
利央は驚いた。
南の果てから来た自分と同じようにサッカーをするために、北の果てから彼も来たのか。
「遠い、かな?そういったら利央くんの沖縄も十分遠いよ」
仁は微笑む。
落ち着いた口調で人当たりがいい、冬馬と比べると安心感がある。
「さあ、ホームルーム終わったらお待ちかねの部活!」
今にも飛び上がりそうな調子でスタンがいって教室に入っていく。
二人は笑ってあとを追った。
最初のコメントを投稿しよう!