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同僚を殺した時、刃が深く刺さり過ぎたのだろう。
俺は引き金を引いた。一発、二発。一瞬の出来事だった。
頭からまるで西瓜のように赤い液体を溢しながらそいつは倒れた。
銃を構えたまま、辺りを窺う。物陰からさらに一人、長い剣を持った男が出てきた。
さっきの若い男だった。
つけられていたようだ。
何を思ったのか、俺は男の手を撃ち抜いた。
剣を落としてうずくまる若い男。
剣を蹴って遠くに飛ばし、男を無理やり地面に捩じ伏せる。
銃を向けて2メートルほど距離を取り、我に返る。
どうして殺さなかったのか。自問したが、答えは見つからない。
若い男に抵抗の意思はもう無いようだ。
そこでようやく味方の兵士が駆けつけた。俺も彼らも銃声くらいではなんとも思わなくなっていた。
俺は横たわる男の体を検査して、衛生兵と一緒に傷の手当てを始めた。
「なぜ助ける?」
彼の問いかけに一瞬考えを巡らせる。
「交戦規定に基づいた行動だからだ」
彼は驚いたような顔をしていたが、何も言わなかった。
俺も何も言わなかった。
その男を兵士に任せて、俺はそこを立ち去った。
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