厄神様が見てる

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相変わらず雛が距離を置くと釣れる状態は続いていた。今は川を挟んだ反対側で雛が様子を窺っている。 「……このくらいでいいかな」 たった今釣り上げた八ツ目鰻を竹篭に入れると、ミスティアはそう言った。手を洗い片付けを始めると、雛も終わりだと気付いたようでこちらに寄って来た。そして竹篭を覗くと、口だけ「うわぁ……」と動かした。 「グロテスク……」 「そればっかじゃん」 「竹篭いっぱいだと皆そう思いそうだけど……」 尻すぼみに雛はそういうと、再び竹篭を覗いて「ごめんね」と呟いた。 「……何してるの?」 「失礼な事言ったから謝ったの」 「……へぇ」 また不思議そうに雛を見る。きっと神様は色々あるのだろう。ミスティアはそう考えると、竹篭の蓋を閉めた。 「この後お店来る?せっかくだからサービスするよ」 「サービスは嬉しいけど……遠慮させてもらうわ」 「見たら食べれなくなったとか?」 首を横に振る雛だが、表情は苦笑いだ。もしかしたらそれも少しは理由にあるのかもしれない。 「私が行ったら、お店が厄くなるから……」 きっと先程近くにいた時の事を気にしているのだろう。ミスティアもそれを聞いて残念そうだが、何か浮かんだのか表情がパッと明るくなった。 「じゃあ出前するよ」 「え、いいの?」 「特別サービスだよ」 「……ならお願いしようかしら」 「はーい」 嬉しそうにミスティアが笑うと、雛も釣られて笑った。今までとは違う、満面の笑みだ。 「じゃあ4人分お願い出来る?」 「出来るけど、意外と食べるんだ」 「違うわよ。周りの人の分」 少し向きになって言う雛だが、ミスティアは笑って流した。忘れぬようにとちゃんと手帳にメモを記すと、「あ」と短い声が聞こえた。 「雛の家知らないんだけど」 「じゃあここで。呼んでくれれば来るから」 「近いの?」 雛は答えず笑顔を向けるだけだった。ミスティアは気にしない事にして、手帳をポケットにしまうと、雛に挨拶して飛び去った。雛も軽く手を振ると、待ち遠しそうに遠くなる後ろ姿を見送った。 END
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