-南と夾-

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「やっと笑った」 「え…?」 「いきなり知らない奴に手当てされて、もしかして嫌がってるけど断れないでいるのかなーとかめっちゃ不安だったけど。…よかった、笑ってくれて。安心した」 目の前の彼を見れば、目を細めて唇の形が横に引かれる。 こんな顔して笑うんだなって思った。 笑うだけで随分印象が変わる。 元から整った顔はしてたけど、笑ったことで雰囲気が柔らかくなった気がする。 優しい顔つきをしてるんだな。 「はい、終わったよ」 その声に我に返れば膝には綺麗な手当てが施してあって。 「ありがとうございます」 頭を下げてお礼をする。 「こちらこそ。どういたしまして」 時計を確認すればまだ授業は終わってない。 「じゃあ、あたしそろそろ授業戻りますね」 椅子から立ち上がって踵を返した。 「待って」 でも、彼の掴んだ手首があたしの身体を引き止める。
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