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始まりはーーそう。
好きって気持ちなんかなかった。
ただ、彼を受け入れた。
別にそこに気持ちがあっても、なくても構わなかった。
あたしの膝の上には幼なじみの夾(きょう)が眠っている。
すぅすぅと規則正しい寝息。
1時間程前に「膝枕して」って言うからしてあげたのに。
頭を膝に預けて5分もしないうちに眠りについてしまった。
いつも、あたしは彼に振り回されてばかり。
でも、そんな夾を突き放せないあたしも、甘いのかもしれない。
夾の髪にするりと指を通す。
「…さらさら」
指の間を流れていく髪は生まれつき少し茶色がかっていた。
「ん……」
身じろいだ夾がゆっくりと目を覚ます。
何度か目をぱちくりさせてぼんやりとあたしを見つめて
「南(みなみ)…、おはよう」
ふにゃりとした笑顔を向ける。
「うん、おはよ。もう夜の6時だけど」
「ん、南の膝枕、気持ちいいからよく眠れる」
眠い目をこすりながら夾が言った。
「なら、いいけど」
くすっと笑って夾の頭を撫でる。
さらさらな髪が手の平に触れた。
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