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 ホームルームが終わると、五分もせずに教室の中には一人の生徒もいなくなった。部活動に行く者、友達と街に遊びに行く者、塾や習い事に行く者、家に帰る者。理由はそれぞれだが、一秒でも教室の閉塞感から抜け出したいのは同じらしい。  私は誰もいない教室で、窓際の前から二番目の机をしばらく眺めた。  今日はもう帰っただろうか。  さっきまでそこに座っていた男子が、少し気になった。  ベージュのダッフルコートを着て外に出ると、あたりは真っ暗だった。委員会があるといつもより少し帰りが遅くなってしまう。  学校から家まではそう遠くはない。充分歩いて通える距離だが、遅くなると歩くのも億劫になる。私は溜め息をついてから学校を後にした。
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