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ぼうっと歩いていると今日あったことを思い出した。
午後の授業のことだ。いや、あれは授業と呼べるものではなかった。ほとんどが席を立って親しい友人としゃべっている。大きな笑い声があちこちで起こり、かと思うと教室を自由に出ていったりしていた。真面目に授業に参加しているのは僅かな人数だった。
私はいつも、授業を受けないのなら何の為に学校に来ているのだろうかと疑問に思う。友人と話したいのなら、学校の外で待ち合わせて話せばいい。遊びたいなら外で遊べばいい。正直、いなくなってしまえばいいと思っていた。
そのとき、ふと少数派の一人に目がいった。
窓際の前から二番目。吉永君だった。
吉永君はしっかりと椅子に座り、机に向きあっていた。しかし彼の手に握られていたのは鉛筆ではなく、鋭く尖ったナイフだった。
なぜ、あんな物を持っていたのだろう。
考えているうちに、家に着いてしまった。考えてばかりいても仕方がないと思い、考えるのをやめた。
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