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書物城の中に入ったのは良い。
だが、扉が多過ぎてどこから見ていいか分からない上に、これをどこに何があるか覚えなければならない事に愕然とする。
「まずは、前任の司書官を探さなければ……」
書物庫の大きさと規模に忘れかけていた書類を改めて思い出した。
「そういえば前任者って、誰だ?」
ふと、疑問に思う言葉が口をつくと、
「僕だよ。久しぶりだね、ゼロ。」
声とともに後ろから羽交い絞めにされた。
「なっ!?」
「久しぶり過ぎて、教官の僕を忘れた?」
耳元に口を寄せて喋る相手を確認しようと藻掻くと更に強い力で締め付けられる。
「声だけで分かるように……イケるように調教したつもりだったけど……離れ過ぎたかな?」
言葉の最後で耳を舐められ噛み付かれた。
「痛っ!!!離せ!!!クロア!!」
肘を思いっきり振り上げ相手に打ち付ける寸前に相手が離れた。
「あぶないなぁゼロは。あと、クロア“先生”って呼んでくれなきゃ」
目の前にふわりと降りてきた祭服に身を包んだ美青年『クロア』は、傭兵になる前の俺の戦術教官だった。先にも記したが、見た目と力が比例しない者の1人だ。
「…なんで貴様がここにいる」
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