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宵闇
「どんな花火が好き?」
と、幼馴染の有沙に言われて僕は何と答えただろうか。
あんまし覚えてないけど、多分。
打ち上げ花火と答えたような気がする。
打ち上げ花火はさ、真っ暗な空を一気に明るくしてくれるし、とても大きくてさ。いかにも花火らしいと思うんだよね。
赤とか青とか紫とかさ。
様々な色が混ざり合って、一つ一つが華を咲かせ、やがて大輪の華となる。
昔から父親に花火大会に連れて行ってもらっていた影響もあるだろう。
「打ち上げ花火…かな」
そう、確かに答えたんだ
うん、間違いないね
有沙はへえーと意外そうな顔で僕を見ていた。
「有沙は?」
咄嗟に僕は聞き返していた。
「線香花火」
そう、返事が来るのに数秒もかからず、僕はあっけに取られていた。
「可愛いでしょ?線香花火」
「う、うん」
正直な話。
僕は線香花火が嫌いだった。
いや、嫌いではないけど、なんか地味だし、風が吹くとすぐに落ちてしまう。
何度この線香花火にイライラしたことか。
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