prolog 疼きを抱えて

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胸が疼く。 痛い。 身体的なものじゃない、『心』が痛いとでも言えばいいのかな? 鈍い痛み。 ‥僕は、この胸の疼きの正体を知っている。 暗い部屋、鏡の前の僕の姿を改めて見る。 実に、酷い姿だ。 細くて、惨めで、男らしさすらない、慰み物にされるくらいしか価値の無い身体。 何もない、空っぽな表情を見ると、吐き気がこみ上げてくる。 酷い顔だ。 この胸の疼きの正体は、自分への嫌悪だ。 穢らわしい、汚れきった自分への。 自らの身体を売った、穢らわしい『鴉』への嫌悪感が、僕の胸を締め付けている。 あの日から5年が経つのに‥ 今も毎夜、必ず。
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