7人が本棚に入れています
本棚に追加
「は、初めまして……
あの、貴方はいったい……」
当然、私の声は固くなる。先程までの喜びは既に消え去っていた。
「いったい、とは?」
その人は聞き返してくる。何の感情も感じ取れない声で。
「いったい、とは何に対してでしょうか。
私が貴女に会いに来た理由?
探偵と名乗ったことについて?
それとも私の素性?」
私は戸惑い、なかば混乱した。
可能ならば全て問いたい。
けれど、私は気付いた。
この人は、明らかに私を馬鹿にしている。
隠れた表情の奥では、きっと嘲笑っているに違いない。
だから、私は言葉を慎重に選んだ。
「えっと、探偵……さん?
あの、私に何の用でしょうか?」
妥当な疑問です、と探偵さんは頷く。
「貴女をお迎えに来ました。そろそろ今の生活にも飽きてきたでしょう?」
それはもう、喉を掻き毟りたくなるくらいに。
しかし、だ。
「ご存じかも知れませんが、私は今、治療中の身です。たぶん許可がないと出られないと思いますけど……」
といっても私は、誰の許可をもらえば良いのかも分からないが。
第一、私は部屋に閉じ込められているだけで治療行為らしきものは一切受けていない。
けれど、探偵さんは事も無げに言う。
「大丈夫ですよ。私が迎えに来たのですから、出られないはずがありません」
「はい?」
「分かりませんか?
貴女をこの施設にぶち込んだのは、私、だということです」
最初のコメントを投稿しよう!