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……
あまりのことに、しばし唖然となる。
探偵さんの言っている意味が分からない。話が上手く繋がらない。
私はブラックという麻薬の依存性を体から抜くために施設に入っていたはずだ。
しかし、探偵さんは自分が私を施設に入れたと言う。
……
「茜君はもう少し聡明だと思っていましたが、やや話が唐突過ぎましたか」
探偵さんの呟きに若干カチンとくるが事実、私は理解が及ばない。
「先週、貴女の高校である騒動が起きましたよね。それの後片付けをしたのが私。そう言えば理解できますか?」
パッと目の前が開けた感じがした。すぐに理解する。
先週の騒動。全生徒の内、なんと半数近くがブラックに手を出していたという。
そんな大事にも関わらず、メディアにも取り上げられず、警察沙汰にもなっていないと聞いた時にはかなり不可解に思った。
だが、目の前の得体の知れない探偵さんが事を穏便に済ましたと言うなら、何故か納得出来た。
いや、待てよ……。それなら、探偵さんはある意味で学校を救ってくれた。私にとっては恩人になるのかしら。
ブルブルと勢いよく首を振る。何となく認めたくない。感謝したら負けのような気がする。
とにかく、話は分かった。続きを聞こう。
「そうですか。それなら私の名前を知ってても不思議ではありませんね……
でも、まだ分かりません。何故、わざわざ迎えに来たのですか?
理由があるはずです」
そう。探偵さんには目的があるはずだ。
僅かな時間しか会話していないにも関わらず、探偵という人物の言う事には何か裏があると理解し始めていた。
「そうですね。貴女の言う通りです」
見直しました、と探偵さん。
全然嬉しくない評価だった。今の今まで、私は馬鹿と判断されていたのだから。
「ですが、続きは歩きながらにしませんか。私も無限に時間があるわけでもありませんので」
言うだけ言って、探偵さんは部屋を出て行く。
「え? ちょっと待って下さい!」
私は今、支給されたパジャマを着ている。この格好で外へ出ろと言うのか。
さすがにそれは……、と抗議しかけた時、扉の近くに置かれている物に気が付いた。
それは施設に入る時に預けた私の持ち物だった。
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