TS薬

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 私の名は高木 雅美(たかぎ まさみ)。歳は十五の高校一年生である。  私には好きな人が居る。それは同じクラスの末次 聡美(すえつぐ さとみ)という端正な顔立ちをした女の子だ。  入学式の時、その子を見かけて好きになった。一目惚れというやつだった。でも、それは叶わぬ恋である。  帰り道、私は道端で商売をやっているお婆さんに声をかけられた。 「お嬢さん、恋してるね?」 「はい?」  振り返る私。  机の上にTS薬と書かれた瓶があった。 「しかも相手は女子。叶わぬ恋だと思ってないかい? でも、これを飲めば、……ニヒヒ」  お婆さんは不適に微笑んだ。 「TS薬って何ですか?」 「それは買ってからのお楽しみさ」 「じゃあ買います」 「五百円ね」  私はお婆さんに五百円玉を渡して瓶を受け取った。  この薬、どんな効果が?  家に帰った私は、早速、その薬を口にした。  すると股間に一物が生えてきた。男になったのだろうか。  私は下着の中に手を入れて確認した。確かに息子がある。  これで聡美に接近すれば……。 「そうだ!」  私は洗面所へ急ぎ、鏡をのぞき込んだ。そこにはユー○・ローウェルのような黒色長髪のイケメン男子が写っている。  これが私……?  コツコツ、と足音を立てながら母がやってきた。 「雅美、何やって……って、あんた誰よ!?」 「誰って、雅美よ。これを飲んでイケメン男子になったの」  私は母にTS薬を見せた。 「こ、これは!」 「お母さん、知ってるの?」 「知ってるも何も、お母さんこれ飲んで女になってお父さんと結婚したのよ」  衝撃的告白。なんと母は元男だった。 「これ、道端でお婆さんから五百円で買ったでしょ?」 「うん。それより、学校ってどうなるの?」 「それなら心配しなくていいわ。その薬は記憶も置換されるの。つまり、貴方は最初から男だったってことになるのよ。因みに、薬を飲んだ人の記憶は置換出来ないわ」 「そうなんだ」 「じゃ、私は買い物に行ってくるわね」  母はそう言って去っていった。  私は二階に上がり、自室に入って薬を机に置くと、ベッドに横たわった。  翌朝、私が学校に投稿すると、聡美が朝一で来ていた。 「おはよう、末次さん」 「おはよう、高木くん」  母の言った通りだ。聡美の記憶が置換されている。 「末次さん、わた、……俺と付き合ってくれない?」  聡美は頬を赤らめた。 「そんな、いきなり言われても!」
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