第1章〈ここは冥府?〉

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「わしは事故で足を悪くして以来、杖が手離せないのだが、どういうわけか、ほれ、このとおり。歩きたくもなるわい」  おじいさんは得意そうにその場でステップを踏む。やり慣れないのか、ややぎこちないけれど、元気だという主張は理解できた。ま、それを言うならあたしもそうだ。杖をつくどころか、指すら動かせなかったのだから。 「ここでこうしていても……」  あたしが言いかけると、 「よし、歩くか」  とオジサンは言って、体をゆすりつつ先に歩き出した。あたしとおじいさんのことはどうでもいいらしい。
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