第1章〈ここは冥府?〉

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 なんにもないのに、足がもつれて転ぶ、といった程度。でもその頻度が多くなってきた。転んだときに手をついていたのに、それができなくて顔を擦りむいたりした。  階段から転落して足を骨折した。普通は直れば走れるようになるはずなのに、ギブスが取れても走れなくなっていた。足が思うように動かない。  原因がわからないまま、やがて指先も思い通りに動かなくなってきた。少しずつ、年単位で動かなくなる部位が広まっていった。いったん回復の兆しをみせたかと思えば、また悪化し、悪化したときには前回よりも症状が重くなった。日常生活にも支障をきたしだした。通学も思うにまかせず、入退院を繰り返すようになった。  動かなくなっていくのは能動的に動く筋肉だけにとどまらなかった。内臓にまで及びだした。
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