第1章〈ここは冥府?〉

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 やがて、呼吸器がなければ生きていけなくなった。  霧が晴れなかった。が、両側の花畑の向こうに、ほんの三十メートルほど離れて平行に道があるのが見えた。いや、平行ではなく、ほんの少し角度がついていて、前方で合流しそうである。それだけじゃない、左右の道ともあたしと同じ方向に歩いている人がいるのだ。  右側はおじいさんだった。といっても六十歳ぐらい。ひょこひょことした足取りで。  左側は四十歳ぐらいのオジサンだった。ひどく太っていて、キングサイズのビジネススーツがまるで着ぐるみのよう。
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