Cocytus

17/17
515人が本棚に入れています
本棚に追加
/208ページ
だが、竜哉は避けようともしなかった。 それどころか、笑っていた。 「俺はな、京子を助ける為にここに来た。けれども、途中で太陽、委員長、彰太までも失った。正直、俺だって怖かった。絶望した。だけどな、今、俺はお前達を助けられる。さぁ、来いよ」 苦しそうな叫び声を発しながら、太陽が竜哉の首筋に噛みついた。 幽霊だが、実体があるかのように竜哉の首筋が赤く染まる。 「くっ……、太陽、一人にしてすまなかった」 次に彰太が肩に噛みついてくる。 「ぐああっ! 彰太、あの時は引っ張れずに悪かった」 最後、京子は竜哉の顔に手をやった。 「京子、痛かっただろう? そうか、わかったよ。俺の目、くれてやるから、代わりに俺の目になってくれ」 京子が竜哉の目に手を掛けた。 「これで、お前達を救えるな。そうだろ、オタク。俺が死ねば、解放するんだろ!?」 達彦は答えない。 だが、それは十分な回答だ。 達彦は黙って、倒れゆく竜哉を見つめる。 倒れ込む間際、竜哉は達彦に向かって片手をあげた。 それを見た達彦の目から大粒の涙が流れた。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!