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朝の教室。
これから始まる1時限目の国語の授業を前に、ホームルームをサボった市川彰太(イチカワ ショウタ)が悪びれる様子もなく、ドアをガラリと豪快に開けて堂々と教室に入ってきた。
「はい、皆さんおはよう!」
教師が来たのかと思って一斉にドアの方を見たクラス全員に向かって、気持ちのない軽い挨拶をして、金色のメッシュが入った髪を掻き上げると、彰太は真っ先にクラスのリーダー的存在の赤羽竜哉(アカハネ リュウヤ)の席に向かった。
竜哉は金髪がトレードマークだから、すぐにどこにいるかわかるし、回りには常に何人かの仲間がいる。
「おう、彰太。今日は遅かったじゃんか。朝練でもしてたか?」
そう言って、仲間に囲まれた竜哉は彰太に向かって挨拶代わりに手を挙げた。
「まぁね」
“朝練”とは、軽音部に所属する彰太が遅刻の際に使う言い訳だ。
彰太は軽音部ではボーカルを努めているが、メンバーがさほど真面目ではないため、朝練などしたことがない。
お馴染みの言い訳を認めた彰太の目に、竜哉の机の真ん中に置かれた赤い封筒が飛び込んできた。
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