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竜哉は困った顔をして、一つ溜め息をついた。
「彰太、これ読めるか?」
そう聞かれても、国語では赤点常連の彰太には読めるはずもなかった。
彰太は読めないと首を振る。
「だよなぁ。人に手紙出すなら振り仮名するとか、読める漢字使えよな」
そんな竜哉の愚痴に反応したのは、神崎太陽(カンザキ タイヨウ)だった。
神崎太陽は、丸刈りの頭に日焼けした健康的な肌の持ち主で、細身で長身の野球部のエースだ。
「じゃあ、あいつなら読めるんじゃね?」
と太陽は、教壇にもたれながら数人の冴えない雰囲気の男子生徒と話をしている、黒縁メガネをかけた男子生徒を指差した。
「ああ、あのオタクか。ちょっと行ってくるか」
竜哉は席をのそっと立ち上がると、オタクと呼ばれた黒縁メガネの男子生徒の元へ歩み寄った。
「おい斎藤、ちょっといいか?」
「赤羽君、どうしたの?」
黒縁メガネの男子生徒、斎藤達彦(サイトウ タツヒコ)は驚いたような顔をして竜哉を見る。
「これ、読めるか?」
竜哉は手紙の文字を指差した。
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