1話 始まりは5月から

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理由は家族のことでだけど、虐待を受けていた訳じゃない。 両親は共に仕事をしていて、兄は世界の珍しい物を写真に納めるために世界各国を回っている。 姉は大学に行って四度めの青春を謳歌中、弟は中学二年生になった頃、急に中二病になり。 小学生の妹は何故か最近僕らの事を罵倒するようになった。 とまぁ、こんな今時見かけない五兄弟なため、養う為には二人とも働かなきゃならなかった。 今はさっきいった通り長男の兄は世界中を回っているので家には六人しかいないけど、それでもみんな色々と忙しいから、どこかへ出掛けたり、遊びに行った事は一つもない。 いつもそうだった、仕事とかスケジュールに空きがないとかなにかとつけて言い訳して、結局家族一緒に楽しんだ思い出なんて一つも作れなかった。 多分この先も一緒の思い出なんて作れないだろう。 でもこれが僕の15歳になるまでの人生だった、なんとも面白みが無い僕の人生、しかも大人になれば生きていく為にお金が必要になるから働かなければならない、そして働いていく内に子供の頃に思い出を作るべきだったと後悔するだろう。 だから15歳になった今、この高校で三年間分の楽しい思い出を作ろうと僕の心の中でそう誓った。 筈だった。
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