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もう諦めきった声で呟く。そしていつまでも留まっているわけにはいかないので、立ち上がり足早に立ち去ろうとする。
ブチッ
立ち上がり湖に背を向けたとき、嫌な音が響いた。紐が切れたのだ、すぐに斧を掴もうとするが筒だけを掴み、斧自体はするりと抜け落ち湖に落ちていった。
「まいったなこりゃ」
おやっさんに一人前になったときに貰った大切な物だったのにな。
しかし悲しいとは思わなかった、いや思えなかった。
今度こそ立ち去ろうとした時、湖の方から何か音が聞こえ、一人の綺麗な女性が2本の斧を持ち水の中から現れた。
その女性の背は160センチぐらいだろうか、見た限り俺より低い。そして容姿は艶やかな髪を膝ぐらいまで伸ばし、目はどこか優しさを感じさせる。いや、感じさせるように顔を作っている、目の端がぴくぴく動いており無理をしていることは一目瞭然だ。胸もそれなりに有るようで、着ているドレスを押し上げている。
「貴方が落としたのはこの金の斧ですか?それとも銀の斧ですか?」
透き通る様な声が耳に入ってくる。
「いや、古びた鉄の斧ですよ。大切な思い出がたくさんつまった」
「あなたは正直者ですね。この金の斧と銀の斧を差し上げましょう」
「いや、いいです。そんなものを貰っても慣れた道具で無いと作業効率が落ちるだけなので」
「私が手間隙かけて作ったこの斧があんなボロイ鉄の斧に劣るですって!それは聞き捨てならないわ!」
さっきとは打って変わって、女性は目尻を上げ、怒声を浴びせてくる。
「見なさいよ!この色!輝き!頑丈さ!どれも最高の質よ!それでもいらないって言うの!?」
「はい、俺にはやはりいりません。だって俺には本当の姿が見えませんから」
「え…それってどういうこと?」
突飛なことを言われ、彼女は困惑している。
「俺の視界には色が無いんですよ。白色と黒色その二つと両方を混ぜてできる色しか」
「……禁呪に、手を出したのね」
「正確には、親が、ですけどね。うちの親はこの世の理とは外れた事象を起こす方法、つまり魔法について研究をしていました。そしてある日、実験で魔法を使うことになりました。しかしその魔法はただ悍ましき姿の化け物を呼びその対価として、二人の親の命と姉の左腕と右足、弟の右半身の神経、俺の感情と視界の色を奪っていったのです」
「じ、じゃあどうして、そんなに普通に振る舞えているの?そんな悲しいことがあったのに!」
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