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そう言うと、塚越は俺をギュッと抱きしめた。
――気のせいじゃなく……?
俺は勘違いじゃなくて、マジに塚越が好きなのか? 抱きしめられてるのが嫌じゃないのは、本気で好きだからなのか?
一目惚れは、間違いなんかじゃなくて……。
俺は塚越の腕の中で、不覚にも安心してしまっていた。そして気付く。こんな奴、と思いながら、それでも待っていたんだ。恋人として触れてもらえることを。
「塚越……」
俺は思い切って、自分の腕を塚越の背中に廻した。
心地いい……。俺、塚越のこと――。
「呪い、効果テキメンですね」
耳元で声がして、俺は我に返った。
そうだ、さっきコイツにキスマーク付けられたんだ! 呪いとか言って。
俺は慌てて塚越から離れた。
「丸め込むつもりだったな!?」
「先生の本当の気持ちを、引き出すための呪いです。丸め込むだなんて人聞きの悪い」
塚越は厭な笑いを浮かべながら、離れた俺の身体を再度包み込む。
「先生と付き合うって言ったのは本気ですよ。だいたい先生のほうから俺に声をかけたんじゃないですか」
う……。それはそうだが……。
最初は手に入れようと思った。綺麗なコイツが欲しかったから。
じゃあ、今は?
自分の中でぐるぐると考えていたその時、言葉が投げかけられた。
「まだ認めないつもりですか。……仕方ありませんね。身体で実感してもらいます」
塚越の手が、俺のネクタイを緩めた。
「何する……っ」
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