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――私立月森高校。
俺が音楽教師として赴任する、最初の学校。
まだ若い俺が男子校に赴任するなんて、本来ならついてねぇなと思うところだが……。
何を隠そう、俺はゲイだ。
年頃の生徒がごろごろいるこの学校で、きっと楽しいスクールライフが待っているぜ!
◆
入学式も終わり、生徒たちもまばらになった放課後。俺は自分の仕事場となる音楽室へ下見に向かった。
音楽室は確か三階――ん?
ピアノの音が聞こえる。
「誰か弾いてるのか……?」
音楽室のドアは少し開いている。俺はそっと中を覗いた。
ピアノを弾いている人物は、制服を着ている。ということは、ここの生徒だ。
背筋がピンと伸びて、横顔しか見えないが、かなりの美形顔をしている。
ピアノの腕もなかなかのものだ。
「綺麗だな……」
俺は思わず呟いていた。
その時、ピアノの音が止まった。
マズイ、覗いてるの気付かれたか……?
「誰だか知らないけど、黙って覗くのは失礼だよ」
そう言うと、生徒は鍵盤に蓋をしてこっちに歩いて来た。
「わ、悪かった。つい……」
――本当に綺麗な顔をしている。多少あどけなさを残してはいるが、切れ長の目、良い形の鼻、薄くも厚くもない唇。少し長めの黒髪も似合っている。
「あの、何か?」
俺の視線に気付き、生徒は不機嫌そうに聞いて来た。
「あ、いや……」
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