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―笑顔でな…。
小山くんの言葉が、胸にジンと響いて。
確かに僕は、山下くんに避けられてから、心から笑えてなかった。
ムリして周りに合わせて僕の気持ちを悟られないように、笑顔と言う名の仮面を被ってた。
僕がこんなんで、山下くんの心の闇を解き放てられるの?
想いが報われなくてもいい、ただ山下くんの真実の笑顔が見たいんだ!
「…頑張るからね。」
鏡に映った僕は、まだ涙目で頼りない顔をしてるけど。
風が吹かないなら、僕が走ればいい…。
もう後ろなんて見ない…そう言い聞かせて、この場を後にした。
―――――――――――
小山side
最近の手越は様子がおかしい。
ムリして笑ってるかと思えば、泣きそうな顔をしたり。
でも、その表情を見せるのは山ピ―の前だけで。
さっきも撮影中泣き出して、駆け足で洗面所に行ってたし。
「僕、振り向かせたい人がいるんです」
遠い目をして言った言葉は、叶わない…そう言ってる感じだった。
手越は気付いてないだろうけど、俺は知ってる。
手越が、山ピーのこと好きだって。
過去山ピーに何があったかなんて俺は知らないけど。
このグループを組んでから、山ピーはみんなとの間に壁を作ってほとんど一人でいた。
でも、手越が初めて山ピーに話しかけたとき、山ピーは柔らかい笑顔で話してるのを見たんだ。
きっと、手越なら山ピーを変えられる。
俺は直感でそう思ったんだ。
頑張り屋で素直で、でもどこか頼りなくて。
そんな弟みたいな手越を応援してあげたくて。
「笑顔でな…。」
こんな言葉で、手越の背中を押してあげられただろうか?
俺はありったけの笑顔で言って、仕事に戻っていった。
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