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―テゴside
なんかみんなに気を遣わせてる…。
どうしたら、上手く振る舞えるのかな。
仕事もこなせてないし、迷惑ばかりかけて…
僕きっと向いてないのかな。
誰もいない部屋で、帰り支度をしようとしたら。
「…靴がない」
確かに1時間前にはあったのに、どこにもない。
代わりに置いてあったのは、一枚の紙きれだった。
【新人のくせに調子乗んな。ムカつく。事務所やめちまえ!消えろ。】
知らないヤツに低レベルなことをされて、怒りを通り越して、悲しくなってくる。
――――――
確かに、みんなと違って経験積んでないし、外見だってパッとしない。
でも、軽い気持ちでここにはいない。
正直、選ばれたとき辞退しようか悩んだ。
でもメンバーの、山下くんの、強い眼差しを見て同じグループにいて相応しくなろうって決めたんだから。
そして、みんなに認めて貰えるくらいのヤツになってやる!
なんかウジウジしてるのがバカらしくなって、この紙きれで初心を思い出せた。
「…さて、帰りますか」
様々な思いを振り切ってちょっと重いリュックを背負って、足早にこの部屋を去った。
―――――――――――
あれから家に着いて、お母さんに「靴どうしたの!?」って言われて、
「どっか行っちゃったっ」なんて笑い飛ばしたら変な顔で見られたけど。
改めてスニーカーを履いて、サッカーボール片手に僕は公園へと向かった。
夕暮れの公園。昼間は子供たちで賑わってるけど、誰もいなくて貸しきり状態。
なんか無性に嬉しくて、ボールを蹴って追いかけまわした。
そう、誰かに見られてるなんて気付かずに。
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