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…それから俺達は、マネージャーにガッツリ怒られた。
マネージャーに黙って手越を探しに行ったこと。
俺が見境なく、人を殴ったこと。
そして、仕事をすっぽかしたこと。
これがいちばんの原因だったりする。
でも、俺にはマネージャーの話なんて少しも聞いてなかった。
未だに意識が戻らない手越のことで、アタマがいっぱいだったから…。
「…とにかく、お前たち厳重注意!!
山下、お前は手越の側にいてやれ。」
「………へぇっ??」
無意識に変な声をあげてしまった。
「手越が心配、って顔に書いてあるぞ。
今日は雑誌の撮影はナシ。
お前たちが戻ったら仕事がたくさんあるからな、覚悟しとくんだぞ。」
「…すみません。ありがとうございます!!」
俺は、急いで手越がいる医務室へと駆けていった…。
――――――――――――――
慌てて走ってきたのを悟られたくなくて、ドアの前で呼吸を整える。
そういえば今日は走ってばかりだな、と思わず笑えてしまう。
そっと医務室のドアを開く。
まだ手越は気を失ってるようだ。
顔色はさっきより、良くなってる…
「…なんだ…?」
この頃、手越のことばかり考えてる。
俺はこんなに、手越を見つめていたっけ?
くるくる変わる表情が、澄んだ声が、伏せられた目が、少し冷たくなってる指先が、悲しく笑う横顔が、
目の前に、たくさんたくさん浮かんで、俺の心はこんなに手越でいっぱいになってたなんて…。
「…今まで、たくさん手越を拒絶してめちゃめちゃ傷つけてごめん。
ほんとは、こんなに…」
手越の手を口元に引き寄せ、甲に口付けた。
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