返歌

12/13
前へ
/42ページ
次へ
    …それから俺達は、マネージャーにガッツリ怒られた。       マネージャーに黙って手越を探しに行ったこと。   俺が見境なく、人を殴ったこと。   そして、仕事をすっぽかしたこと。     これがいちばんの原因だったりする。       でも、俺にはマネージャーの話なんて少しも聞いてなかった。     未だに意識が戻らない手越のことで、アタマがいっぱいだったから…。     「…とにかく、お前たち厳重注意!!     山下、お前は手越の側にいてやれ。」         「………へぇっ??」   無意識に変な声をあげてしまった。   「手越が心配、って顔に書いてあるぞ。   今日は雑誌の撮影はナシ。 お前たちが戻ったら仕事がたくさんあるからな、覚悟しとくんだぞ。」     「…すみません。ありがとうございます!!」       俺は、急いで手越がいる医務室へと駆けていった…。                       ――――――――――――――    慌てて走ってきたのを悟られたくなくて、ドアの前で呼吸を整える。     そういえば今日は走ってばかりだな、と思わず笑えてしまう。       そっと医務室のドアを開く。 まだ手越は気を失ってるようだ。     顔色はさっきより、良くなってる…   「…なんだ…?」     この頃、手越のことばかり考えてる。   俺はこんなに、手越を見つめていたっけ?   くるくる変わる表情が、澄んだ声が、伏せられた目が、少し冷たくなってる指先が、悲しく笑う横顔が、 目の前に、たくさんたくさん浮かんで、俺の心はこんなに手越でいっぱいになってたなんて…。     「…今まで、たくさん手越を拒絶してめちゃめちゃ傷つけてごめん。     ほんとは、こんなに…」         手越の手を口元に引き寄せ、甲に口付けた。    
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

362人が本棚に入れています
本棚に追加