始まり

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どんだけ、走ったんだろ。 山下くんの苦しそうな、悲しそうな表情がすごく胸が締め付けられた。 僕じゃ、何にも出来ないのかな? この胸の中に出来た切ない痛みの理由が、今の僕にはわからなかった…。 ――――――――――― 山下くんとはあれから、度々仕事で一緒になるけど、お互い何もなかったかの様に明るく接した。 でも、少し避けられてる気がする。 だって… 「山下く…」 「亮ちゃん!こないだのさぁ…」 ほら、話しかけようとするとこうやって逃げていくんだ。 僕がしょんぼりしてると、柔らかい笑顔で増田くんこと、まっすーが近づいてきた。 「どうした?また避けられたの?」 「うぅっυ僕どうしようっυ」 まっすーは先輩だけど、歳も近くていちばん最初に仲良くなれたんだ。 いろいろ相談に乗ってくれて、まっすーがいなかったらきっと、続けようって思わなかったかも。 「周り誰もいないときに話しかけてみたら?そうしたら逃げないでしょ」 「…これで逃げられたら立ち直れないかもυただ仲直りっつか…役にたちたいだけなのに…」 「手越も頑張るよね。…でもあんまり深入りしない方がいいよ」 「??なんで?」 「手越は知らない方がいいよ♪」 そんな引きつった笑顔見せられたら気になるじゃん! 「気になるじゃん!お願いまっすー!!教えてよ!」 僕はまっすーの肩を掴んで激しく揺さぶる。 「わっυ…わかったから!でも、ここじゃ教えられないから後でね」 シーッて指でしながらまっすーは撮影に戻っていった。 でもなんでまっすーは知らない方がいいよなんて言ったんだろ。 僕はただ、山下くんの力になってあげたいだけなのにな。 錦戸くんと楽しそうに話す山下くんを見つめてたら、なぜか胸がチクリと痛んだ。
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