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『操るのではありませんよ。
導くんです』
『そうだぞ。操るとは人聞きの悪い』
おっと、これは失言。
…と言うか…
なんだか黒蛇が爺さんに対して随分寛大であると窺える様子を、彼等と今回最初に会ったBARの段階から感じてる。
普段の黒蛇は…
まぁ、紳士的ではあるけど、千と同様、やっぱりカズサやイッサに纏わる事にしか興味が無いっていう、クールさを主に感じるけど…
『そんな事が不思議ですか?』
…だから…考え事を…
……まぁいいや。
そーだね、不思議だね。なんで爺さんにも懐いてるの?
あなたには興味の無い人だと思ってた。
『そんな事は有りません。
そうですね…お爺様は最期まで私の味方でいて下さった方だからでしょうか。
孫の幸せを願って、私の幸せをも願って下さった方ですからね。
それは勿論今も。
裕規だってそうです。
だから千が裕規に懐いているのも、なんら不思議な事ではありません』
…ふ~ん…
千も本能的に、そういう事分かってる…って事かな?
『そうかもしれませんね』
へー…なんか凄い話だねぇ…
そっかそっか……で、その幸せを願ってたお祖父さん。
このバカップル二人の前世の馴れ初めを、第三者的にもうちょっと詳しく聞きたかったんだけど…丁度いい機会だから教えてよ。
『おお…では、儂が記憶しておる事を話してやろう』
そうして暫しの間爺さんの長い昔話を聞いた。
話を大方聞き終わったであろうタイミングで、同じ部屋で寝ていた海瑠が目を醒ました様な物音が聞こえて…
気付けば外は大分明るくなってきていた。
もう朝か…
『話の途中だが…裕規がそろそろ目覚めそうだから戻るとしよう』
『そうだね、一佐も…』
『千はまたどうせ二日酔いなんですよね…
一佐とお酒飲める様になったら楽しいかもとか…どうせ楽しめないのだから、変な気を起こさねばいいものを…』
なんだかブツブツ言いながら、彼等は海瑠の部屋を出て行った。
でもって、話に集中し過ぎて俺の仕事は…
「あれ?多々良…お前寝た?仕事終わったか?」
「全っ然、終わってない~…」
寝起きの海瑠に問い掛けられて、苦笑交じりにそう答えた。
本当なら朝になる前に終わる筈だったんだけどなぁ~…
…まぁいいや。
面白い話が沢山聞けたから。
彼等から聞いた新たな話を、今度は俺がみんなに話してあげるとしよう。
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