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『巡り合わせは有るのやも知れんな。私が裕規の守護霊となって、それと同じ時代に、この二人も再び巡り逢えたのだから』
何やらにこやかな表情で、爺さんはカズサと黒蛇に視線を向けた。
これはなかなか面白い話に…
あ、そうだ。
黒蛇とカズサの馴れ初めをキチンと聞くのに、これはいいチャンスだ。
そう思った俺が次の話を振ろうとすると、先に爺さんがまた話し出した。
『しかし、ここまでくるのも順風満帆では無かったのだぞ?』
ん?
どーいう事?
『一佐が大学に行かない事にしちゃったのがね…
本当なら、一佐は千と同じ大学で、同じ経済学部に行くべきだったんだよ。
それを拒否して働こうとしてしまったから…』
『此方も焦ったぞ。
下手な所で働かれてしまったらどうなってしまっていたか…』
『一佐のストーカー被害も酷い物が有りましたからね』
ずっと静かだった黒蛇が、ここで漸く会話に混ざる。
あー…それは千里から聞いたよ。
凶器持ってたヤバいのが居たって…
『そう。裕規に接触出来てなければ、間違い無く大変な事になってた…』
『それに、全く信頼の置けない場所に働かせに出すのも、千が今の様に穏やかではいられなかった筈です』
ん~…そっか…
で?みんな焦ったけど、結果今の職場でイッサは穏便に…
『だから、今の職場に来ない可能性の方が高かったのだぞ?』
……爺さん、何かしたの?
そう問い掛けると、爺さんは無言でニッコリ俺に笑いかけた。
あ~…何か…
イッサが美容師をやりたがる様な…
店長さんがイッサを雇いたがる様な…
不思議な力が働いたんですね……って事にしておこう。
大学行かない事に決めたのはイッサだし、結果的に、今の職場がイッサにとってはベストな場所なのは間違い無い。
『勿論』
…考え事にまで返事する必要無いから。
でも良かったね、お祖父さん。
『何がだ?』
話聞いてれば、可愛い孫二人に漸くちゃんと接触出来て。
イッサが大学に行ってたら、結局現代に居る孫達とは直接接触出来ず終いでしょ?
『何を言っている?
一佐と裕規が接触せずとも、裕規は総太の友人であり、翔の兄であり、亜稀の上司にあたるんだぞ?
儂がその気になれば、一佐と裕規が接触する機会はいくらでも作れる』
…うん、止めてあげて。
ヒロさんが操られてる様で気の毒…
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