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スペイサイディング:郊外
太陽が沈み、昼間とは違った賑やかさが顔を出し始めた小さな村。
山を挟んだ向こう側では、腐敗した政治を行う王が侍女を片手に、一杯よろしくやっている頃だろう。
そんな大都市から離れたこの名も無き村は、王からの恩恵を貰えずとも質素に、しかし逞しく村人同士が協力し合い生きている。
飯屋、風呂屋、家具屋、雑貨屋と一通りの店は揃ってはいるものの、人口の少ないこの村では店の数も一店舗ずつしか無い。
そして、昼間の労働で疲れ果てた男達が夜になると決まって訪れる場所があった。
飲み屋ーーハピネスーー
その店は今日もいつも通りに開店し、いつもの顔馴染みに酒を出し、いつもの如く騒がしい音を作り出していた。
泣き声や笑い声、そして時に怒号。
しかし、そこから決して喧嘩へと発展することは無かった。
何故ならこの店の看板娘、リリアル=フローに毒気を抜かれてしまうからである。
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