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まぁ、相手は女の子なんだ。優しく対応しなければ。
「もう一度聞きますが、あなたは誰なんですか?」
『えっ、私?私は中田佳奈。ベテルギウス高校の二年よ』
ナカタカナ?回文っ?!つーかタメかよ……
「そうじゃなくて!あなたは何で俺の中にいるんですか?!」
そう、核心はそこだ。
『んー、よく分からないけどキミが私の邪魔をしたからじゃない?』
邪魔?何のことだ?俺はただ貴女を助けようとしただけだよ?
「あの、話が見えないんですが……」
すると一転、彼女の口調が暗いものに変わる。
『私、ひき逃げされたらしいの』
「!!!」
そうか、だからあんなに血が……俺はじっと"彼女"の話に聴き入った。
『死にかけていたんでしょうね。轢かれたと分かった時にはカラダが空に浮いてたの。
その時は流石に焦ったわー』
軽いなー、こいつ死にかけたんだろ?
『でも、プカプカと楽しかったからしばらく飛んでいたの。そしたら、何だか地上から離れていってる気がして……急に恐くなった私は急いで自分の体に戻ったわけ』
俺はその話にただポカンとするしかなかった。
何だか救急隊の人達が俺を見て「ヒトリでツブヤイテイル!」やら「アタマがオカシクナッタノカ?」など言ってたみたいだが、多分気のせいだろう。
『いえ、戻ったはずだった……キミが私を助けに来なければね!
つまりは"私"が私に戻る前にキミという障害物に当たってしまったから、こんな状態になってしまったのよ!』
障害物て……俺は跳び箱なのか?それとも平衡棒か?!
「ちょっと待ってくれ!目の前に人が倒れていたら誰だって助けるだろ?!」
『いいえ、私は助けない。だって変な人が私に入ってきたらイヤだもん』
こ、こやつめ!
「さっきのは偶然だ!それに早く自分の体に戻ればいいだけの話だろ!」
『………。そうしたいのは山々なんだけど』
・・・けど?
その答えを聞く前に、優しく肩を叩かれた。そして奇妙なモノでも見るかのような目をした救急隊員は心配そうに言った。
「病院着きましたが、念のため、あなたも検査受けときますか?」
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