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早馬を飛ばし、俺とルーシェはハルを追いかける。ペンダント型の魔具が指し示す方へただひたすらに馬を走らせる。魔術で無理やり加速させた代償で馬は口から血泡を垂らし、目を充血させる。馬を使い潰してこれで何頭目だろうか。通常の数倍の速度で駆けているのに未だ敵の背すら見えない。
「人ひとり担いでいるはずなのに何て速さだ」
「逃走手段を用意していて当然だろう。最悪、複数いる可能性もあるぞ」
ルーシェが馬に回復魔術を掛けている間に、馬をさらに加速させる。敵は複数いるだろう。実行犯が黄金色の剣を持つ銀髪だっただけで、補佐役がいて当然だろう。
「こら、フェルナ。馬を潰す気か? もう街里は近くにないのだぞ」
「わかっている。しっかり回復してやれ」
「破壊者め」
馬に魔術を駆ける。複雑な文字同士が馬に絡みつき、さらに加速させる。速く、早く、疾く。俺のはやる気持ちに呼応するかの如く、馬は狂ったように駆け抜ける。
もうすぐだ。もうすぐ追いつけるはずだ。そうでなくては困る。俺の親友に手を出す奴は例え何であろうとも、
「壊してやる」
「おい、見て来たぞ」
「ああ、わかっている」
前を走る一台の馬車。馬車にしては速い速度で走っている。それにこの道は人間側へ向かって走る馬車なんて珍しい。なら、敵だ。魔具も示している。
胸の内で燻ぶっていた闘志が熾火の如く燃え始める。刹那、黄金の輝きが飛来した。
先行していたルーシェの大剣が轟音とともに斬り裂く。
「フェルナッ!」
「行けッ!」
即座にルーシェに魔術を掛ける。それと並行して攻性魔術を構築。そして奴らの足をつぶすべく、真空の刃を無数に放った。
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