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夕方。
ある者は部活に励み、またある者は友人とどこかへ遊びに行ったりと、高校生には在って無いものだった。
地平線の彼方へと消える夕陽が綺麗な、そんな帰り道を歩む少年と少女の姿が。
「あ~眠い、すごく眠い。
気を抜けば今ここで寝てしまいそうだ」
「……それ、端から見れば変人だよね駿斗?」
ハヤト
駿斗、と呼ばれた少年が億劫そうに隣を歩く少女を見る。
「いいか捺姫、人にはな、睡眠という物が必要だ。
どこかの国で『ずっと眠らなければどうなるか』という実験を行ったが、中には幻覚を視る人まで出たんだぞ?」
「それって個人差あるしちゃんと眠れば問題ないし、駿斗が気にする問題じゃないよね?」
「ごもっともです」
ナツキ
捺姫と駿斗に呼ばれた少女が駿斗の主張を一蹴する。
駿斗は何の気無しに捺姫の返答を肯定した。
何て無い穏やかで平和な日々。
だがこの仮初めの平和は一人の少年の手によって打ち砕かれるのを、駿斗と捺姫はまだ知らない。
「………ぅゎぁぁ」
「……?駿斗何か言った?」
「いや、特に何も。捺姫の空耳じゃないか?」
そうかなぁ……と捺姫が歩き出したのを駿斗が追いかける。
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