第1章

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夜目にも白い、キメ細やかな肌。 涼し気な切れ長の瞳。 スッと細い鼻梁。 やや薄めの形のいい唇。 額を隠してふわりと目もとにかかる、柔らかな栗色の髪。 年の頃は15、6、月の光をその身に集めたかのような、輝くばかりの美少年だった。 少女めいた可憐な美貌だが、瞳に宿るきつい光とはだけた胸が、紛れもなく少年であることを告げていた。 ただ、普通の少年と違うのは、頭部からふわふわの白い狐耳が生え、ふわふわの白いシッポがある点だった。 体つきは危ういほど華奢で、白いシャツに細身のジーンズをまとい、腰には細身の刀を帯びている。 呼吸を整えながら、紗雪は敵が集まって来るのを待った。 秋の風が、梢を鳴らして吹き抜けてゆく。 社(やしろ)の前のその場所はサッカーができそうなほど広く、左右を丈高い針葉樹に囲まれていた。 一面に敷きつめられた白い玉砂利が、夜目にも美しい。 神社特有の清廉な空気が、ひんやりした夜気の中にわだかまり、そこが紛れもなく神聖な場所であることを厳かに告げていた。 ただ、社そのものはかなり年期が入っており、古くさくみすぼらしい印象を拭えなかった。 社を背に、紗雪は静かに佇んでいた。 涼し気な切れ長の瞳は、まっすぐ前方に向けられている。 郊外の住宅地にあるこの神社に来るルートはひとつ……敷地の向こうの幅広い石段を昇ってくるしかない。 敵が現れるのはあそこからだと、紗雪は神経を研ぎ澄ませて〈黒〉の連中が集まってくるのを待った。
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