プロローグ 記憶

2/2
前へ
/8ページ
次へ
ミッションクリア。  俺は一つ息をつくと、コア回収のため捕食モードに変える。  制御コアユニットから大量のオラクル細胞が現れ、神機を包み込む。巨大なアギトがヘラの肉とともに心臓にあるコアを喰らった。  捕食し終えるとアギトは神機にしまわれ、もとの蒼い刀身が姿を現した。 「収穫はどう?」  広場を見渡せる低い民家の屋根から降りてきた師匠は、笑顔を見せながら尋ねてくる。  俺が己の神機の制御コアユニットを見ると、光が明滅していた。 「結構、レアなコアだったみたいだ」  答えると、ヘラの血を振り払った親友が、嬉しそうに言う。 「戦果は上々、ってわけだな。んじゃ、帰還しようか」 「ええ、そうね」  師匠も同じように頷いた。  俺もそれに同意すると、本部のヘリコプターとの集合場所に足を向ける。  しかし。 「……!」  俺は言い知れない何かを感じて、さっと振り向いた。 「? どうした、カイト?」  親友も足を止めて振り返る。  アラガミによって食い荒らされ、砂塵が風に舞う、荒廃した都市。  三人の他に、生き物の気配はない。  師匠も不思議そうに俺に向き直った。 「……」  俺はただ、じっと前を見据えた。  しばらくそうしていたが、首を振って二人の方に向いた。 「悪い。なんでもなかった――、っ!」  その瞬間、親友と師匠の後ろに、巨大な姿が現れる。 「トキ! 師匠!」  俺は二人に向かって手を伸ばす。  目の前が朱く煙り、親友と師匠の姿が消えた。  ――――それから3か月。  俺は、生まれ故郷の日本にある、極東支部に配属になった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加