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「稜さん!」
ゆいの弟の祐は高校三年生で、医学部を志しているらしく、俺の話を素直に聞いて、驚くほど何でも吸収していく。
多分、患者思いのいい医者になるだろう。
一緒に勤務する日が来るのが楽しみだ。
「翔、いい子にしてたか」
翔は俺の訪問をいち早く察知して可愛らしく出迎えてくれる。
抱え上げると小さな両手を首に回してしがみ付いてくる。
会うたびに重さが増しているように感じる。
健やかに成長していることに安心する。
「…ゆい」
ゆいに触れると、ゆいは俺の腕の中ではにかんだ笑顔を見せた。
何度触れても、初めてのように。
柔らかくて甘くて頼りない。
愛しくて胸が痛い。
俺はいつまでお前に触れることを許されるだろう。
その日が来るのを恐れながら、
でも、確かに、
その日が来るのを願っている。
ゆいの幸せを心から願っている。
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