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「姉ちゃん。…リナが来てる」
その日は、突然やってきた。
悠馬の妻が離婚届を持ってゆいに会いに来た。
何を捨てても何を奪っても
自分の命を引き換えにしても
悠馬をつなぎとめたくて必死であがいた。
愚かだけど。許しがたいほど愚かだけど。
気持ちはわかる。痛いほど。
もう誰かを。自分を。
傷つけるような恋をするなよ。
「稜さん、私、…」
リナから悠馬の帰国を知らされたゆいの目には悠馬しか映っていなかった。
ゆいと翔を連れて秋田空港から東京へ向かった。
ゆいを励ますためにその手を握った。
小さくて。一生懸命で。
冷たさに、汚れに、触れて荒れて。
ささくれて、血を流して。
子どもを守るために必死で。
お前のこの手が好きだよ。
親指の腹でそっと撫でる。
俺は少しでもお前を守れたかな。
少しでもお前を笑顔にできたかな。
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