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空港の到着ロビーは多くの人で溢れていた。
こんなにも大勢の人がいる中で、たった一人だけを探している。
腕に翔を抱えながら、ゆいはもう何時間も立ち尽くしていた。
この世界にいる大勢の人の中で、たった一人に出会えるのは奇跡だと思った。
出会えたこと。
共に過ごせたこと。
泣き顔も怒った顔も。
焦ったり甘えたりふざけたり。
『稜さん』
俺を呼んで俺を映してくれたこと。
触れ合って溶け合ったぬくもり。
しなやかさ柔らかさ、そして強さ。
ありがとう。
お前の全てを忘れない。
「パパ―――――っ」
ゆいと翔が悠馬を見つけて、悠馬がその目にゆいを映した。
さよなら、俺の初恋。
さよなら、俺の最初で最後の、愛しい人。
ゆいの唇に最後のキスをした。
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