machi.番外編5

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「稜さん、そろそろ着くんじゃないですか」 部屋の中から俺を呼ぶ声に適当に相槌を打った。 「あー、…そうだな」 マンションのベランダで抜けるように青い空を見上げながら、タバコをくゆらせる。 「もう、また。吸い過ぎですよ!」 部屋から出てきた祐が、俺のタバコを見とがめて没収する。 「医者なんですから。健康には人一倍気をつけないと」 祐が世話女房みたいに俺のタバコを片付け、ついでにベランダの掃除もする。 秋田の高校を卒業した祐は志望校に合格し、東京に上京して、医学部生として学生生活を謳歌しつつ、はなはだしい頻度で俺のマンションにやってくる。 俺は聖北斗総合で半年間の交換研修を終え、また東京に戻っていた。 ゆいが悠馬と結婚して、3年が経つ。 ワールドツアーで世界を回っている悠馬は日本にいないことが多い。 ゆいは悠馬に伴いながら、2人の子どもを連れて慣れない海外で忙しく頑張っているらしい。 翔はしっかり者のお兄ちゃんになって、すっかり口達者になり、頭脳面でも持ち前の賢さを発揮して、ゆいと妹を守っている。 彼らは日本に戻ってくるたび、俺のマンションを訪れる。
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