machi.1

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「あのね、お母さん。 仕事が大変なのはわかるけど、翔くんにとって、 お母さんは一人だけなのよ。 忘れないでね」 保育園に着くと、もはや先生は呆れた顔を隠さなかった。 翔を迎えに保育園に行けたのは、電話があってから4時間後。 既に17時を過ぎていた。 担任の先生に頭を下げて、翔を引き取る。 翔はぐったりしていて触っただけで熱が高いのがわかる。 歩く元気がなさそうなので、抱き上げて園を出た。 翔は小児喘息でしょっちゅう熱を出す。 一晩中咳が止まらないことも多い。 体重は10キロしかなく、たいてい2歳に、下手をすると1歳に間違えられる。 健診では「発育不全」と言われ、定期的に診察を受けている。 最近では、「口数が少ない」「子どもらしい無邪気さが見られない」と指摘され、心因性の可能性が高いと言われている。 タクシーを呼んで、18時まで診察をしてくれる病院に向かう。 このまま家で寝かせてあげたいけれど、明日からは休むと欠勤になる。 治療証明があれば病後児保育室に入れてもらえるから。 …翔にストレスをかけているのは私だ。 翔は要求をしない。 びっくりするくらい静かに「わかった」と言う。 本当は、もっと翔のそばにいて、翔のわがままを聞いてあげたい。 でも、働かなくちゃ翔の生活が守れない。 …どうして私は、こんなに無力なんだろう。
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