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「ほんとにっ」と答えた太一に子供らしい屈託の無い笑顔が戻り、太一は龍仁に向かって瞳を輝かせている。
龍仁は自分のジェットヘルを太一に被せ顎紐を留めると、太一をヒョイと抱えハーレーのリアに跨がせると、すかさず龍仁もハーレーに跨がりキーを回しエンジンを始動すると、太一の両手を取り自分の胴に巻き付ける。
「太一、しっかり掴まってろよ」
龍仁に言われた太一は小さく頷き「うん」と返事をすると龍仁の背に体をくっつけじみついた。
ハーレーを走らせ暫く走ると、目の前から白と黒に塗られた車がやって来る。
――チッ、ついてねぇ。こんな時に何でいんだよ……この暇人が……
村の駐在が乗ったパトカーが、龍仁のハーレーの行く手を塞ぐ様に止まる。
何時もならなんて事はないが、今の龍仁は太一に自分のメットを被せているのでヘルメットを被っていなかった。
龍仁は諦めた様にハーレーを左端に寄せてパトカーの前に止め、スッとハーレーから降り立つ。
パトカーがゆっくりと進み龍仁の側で停止すると、中から一人の警察官が降りてくる。
「いやぁ、おたくノーヘルだねぇ。駄目だよヘルメット被らなきゃぁ」
降りて来た警察官は笑顔でそう言うと、チラリと後ろの太一を見た。
「おたくのお子さん?じゃないよねぇ……ちょっと話しを伺いたいんで、このまま派出所まで来てくれるかな?」
龍仁に反論させず矢継ぎ早に捲し立て、完全に龍仁を怪しんでいる眼で見ている警察官から、龍仁がふとパトカーの中に目をやると、パトカーの後部座席に太一といた二人が乗っていた。
――なるほど、そう言う事か……
龍仁は瞬時に事情を察すると、諦めて派出所に行く事にした。
派出所で龍仁は事の成り行きを説明すると、警察官は訝しげにしながらも龍仁にノーヘルだけのキップを切っていた。
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