いきなり物語が始まるわけではないワケで。

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「こんちわーあ」 体育館の引き戸を開けながら渚は挨拶する。 中にいたのは、たった3人だけだった。 1人は私服で茶色のボサボサ頭。 壁にもたれかかって本を読んでいる。 あとの2人は防具を付け、真ん中で試合をしている。 恐らくこの距離では挨拶など聞こえていないだろう。 いやそもそも、なんの感情もこもってない渚の挨拶を聞き取るのが至難の技なのだが。 渚は壁にもたれかかっている茶髪に近づく。 茶髪の隣に座ると、ゆっくりと顔を渚に向けた。 「この小説はハズレやね。タイトルがよかったから買っちゃったけど…こりゃ失敗、失敗」 茶髪は手に持った本をパタンと閉じる。 そしてヘラっとした笑顔を作った。 「おはよー、ナギさん」
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