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ただ紅蓮が闇夜を照らして世界を彩る。そんな幻想的な世界ならばなんと良かったか。
ここは里?というより村と呼べる。いや違う。村と呼ばれていた場所だ。そこは血みどろの地、断末魔の叫びだけが上がる。
そこに対峙する二本の刃はただ弾き合っていた。そのリズムは不規則で芸がない。
一人は黒髪の少年、ただ必死に刃を振るい戦っていた…
「なぜだ!君はこんなこと望んでいたのか!?答えろよ!」
少年は激情を含んだ声で相手に投げかける。一心を込めた咆哮は焼き腐った臭いが充満する地に響いた。
少年は信じていたのに!とまた一閃、しかし相手は全く揺るがずに受け止めてきた。
その姿は深紅の髪を靡かせ白い剣を手にした女剣士、という殺人鬼が平喘と少年を嘲笑う。
「当然だよ。鬼神の民はこの世にはいらない」
あっさりとした返答に辺りは静まり返った。周囲にいるのは少年と少女、そして駆けつけた軍隊だけだ。
時期に事態が収縮され終わりを見せるだろう。だが納得ができない。
……
君は誰よりその血縁を誇っていたじゃないか?なぜそうきっぱり言い切ってしまうんだよ。
「ルヴィ……俺はお前を!ーー」
言葉は意味を成さない。わかっていた。すべてはもう手遅れで決着がつかないことをもう感じてしまった。
本気で戦っても勝てない最強の鬼神の民"血髪の鬼姫"に対して戦意を上げる。その感情の変化に鬼姫"ルヴィ・アラード"は不敵に微笑む。まるでこの瞬間を待ち侘びたかのように。
「やっと、私を躍動させ焦がれさせてくれる気になったか。ナルキ……」
「いくぞ!鬼姫!」
……
嫌な夢だ。過去の自分の奮闘を見ても優越感に浸るわけでもないし、むしろ気分が悪くなる。一緒に歩めなかった事実、そして紛れもない真実である。
俺とルヴィはあの夜、互いの思いと狂気の中で対峙した。鬼神狩りの夜の最終夜、アラード当主を殺して村を皆殺しにされたあの忌々しい空間で戦った。
俺たちにとっては悪夢というよりも悲劇と呼べる一夜だった。
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