1人が本棚に入れています
本棚に追加
あの夜、俺とルヴィは間違いなく……
「しかし、物語は始まりを迎えた。」
寝転んでいる頭上から語りかけられるように言われた。不意打ちで反応が遅れる。
「ナルキ……いや、今はキルトであったか?」
半透明に透けている髪を押さえながら少女は飄々と俺を見下ろしている。その姿は神聖な感じさえ思わせるものだった。
彼女の名はナギリシア・エクエル・ミショモツカという呼びにくい長過ぎな名前で本名は人では理解出来ぬ音になる。
髪は真紅で先は半透明、真っ赤な上着に白いドレスのような服を纏っている。靴も白を基調にされたロングブーツ、そして歪で理解不能な文字が記された黒の帯を身体に巻きつけている。文字は青白い不気味な光を放っていた。
「感傷に浸っちゃまずいか?」
「あなたはもう少し自信を持ちなさい。キルト」
「ナルキでいいよ。もう完全に思い出してる。」
俺は一年あまり記憶がなかった。自分が一体何者なのか?そんな疑問を持ちながら生きていた。
けれどもナギリシアに出会い、真実をしらされた。というよりは思い出させてくれたというのが正解だろうか。
「ナギリ、あそこに戻らなくて大丈夫なのか?」
「今更何を?それよりルヴィが来ましたよ。相手をしてあげなさいな」
彼女はそう言って俺に重なる。そして光となって霧散され姿を消した。軽い気回しというところらしくルヴィに会話の座を明け渡して行った。
「ナルキ、その……」
顔を赤めらせてガチガチのルヴィが数秒後に視界に入り言葉をうまく発していない。一体何を言おうとしているのだろう?と親身でその答えを待つ。
最初のコメントを投稿しよう!