贖罪 読む際の注意事項

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「私を、恨んでいないか?」 深紅の髪を風に靡かせながら少女は意を決して俺"ナルキ・シルベン"に言い放つ。顔がか細い自信なさげで、尚且つ弱々しく悔いている様子だった。 「……よっと。」 俺は寝かせた身体を勢いを付けて立たせる。そしてまじまじとルヴィの顔を見つめると彼女は視線を俺から逸らした。 「過去、俺が果たせなかったあなたの願いを実現するために俺はこうして舞い戻ったんだ。なぜ恨まなきゃならない?」 そう、過去に救えなかった鬼姫。今更何を償うと言っても許されないだろう。俺は……知っていたのだ。 ルヴィがアラードを憎んでいたことも、彼女がもう既に自分を制御できなかったことも。 なのにあの夜、俺は彼女を連れて行ってしまった。 寧ろ……俺の方がその問いをするはずだった。 俺が記憶を失っている間もずっとルヴィは苦しみと罪悪感に蝕まれ続けていたのだから。 「でも私はお前を……一度殺したんだぞ?……そんな奴の願いを叶えるというのか?」 深紅の髪の少女はただただ自分の犯した罪を自責している。この時、純粋なんだな……と思った。ただ一途に鬼神から告げられた命令に耐えて殺してきた血髪の鬼姫の異名を持つルヴィ、なのに誰一人として彼女を諭してはくれなかったのだろう。 それどころか、村から居場所を奪い追い出した。ただ鬼神の民の中でズバ抜けて戦えただけで、周りよりも強いだけで災厄を齎す娘とされて追い出されたのだ。 「ルヴィ……俺は君の最後の願いを叶えたいよ。必ず会わせてあげるから……」 だから。そんな泣かないでくれ。 君が君でいられる。そのたったひとつの希望だと……信じているから、笑ってくれよ。ルヴィ……
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