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約束というのを思い返して忘れていたというのは言うまでもないことだ。
「ゼル様、私には近寄らない方がーー」
「なんでだよ?従兄妹だしいいじゃん!それに泣いている身内をほっとけないって」
「私が、泣いている?」
同い年の男の子に言われて頬に触れるが、そのようなことはない。からかいだろうか?と思うが、それはそれで無邪気だなと思う。
「ルヴィ、たまには泣いてもいいと思うんだ。最近さ。なんか……」
従兄妹であるゼル様の話は続く。何気なくはがない話を私にする。意図が掴めないが確実に何かを伝えようとしているのは理解できた。
「ちょっとついて来て!」
ゼル・アラードは痺れを切らした様に私の手を取って村の外へ駆け出した。一方的に連れ出されて行くのに、あまり嫌な感じは無かったのも不思議だ。
そして、村から見えない茂みで足を止めた。何の変哲もない茂みでゼルは向き直る。
直後、予想も付かない力を身体に感じる。
ガバッ!
「ごめんな。ルヴィ」
ただその一言と共に抱擁される身体、しっかりと抱えられる安心感になぜか身体が火照る。
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